特許出願の仮設計(発明提案書)

 
たま
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前回までのあらすじ

今注目の文房具メーカーに研究者として勤める新は 先輩研究員の颯真と研究チームを組み 新商品開発プロジェクトに挑んでいる。
新と同期入社で若手のホープと称される事業企画部の悟(さとる)がプロジェクトチームに加わった
新は遂に新商品のコンセプトを考え出し この方向性でプロジェクトへの提出を目指すことになった。
新商品のコンセプト技術について特許出願をするため 新と悟は特許部の瑛大と相談を開始した。
 
たま
本編に入る前に前回の学習ポイントをおさらいしましょう!
 
良い特許出願を作り上げるための代表的な要素を3つご紹介しました。
1つ目は権利範囲です。
特許権を獲得し縄張りとする範囲の魅力の高さや広さです。
2つ目は特許性です。
良い範囲を設定して特許出願したとしても権利として脆弱では困ります。
最低限審査を突破して権利が貰えること、権利になった後も簡単には潰されないだけの内容強化が必要です。
3つ目は侵害立証性です。
他社が自社の縄張りに入って来た時に、特許権の侵害行為に気付けるか、そしてそれを裁判の場で証明できるかが大切です。
これら各項目のステータスを高める設計をし、出願書類に落とし込んでいくことを目指しましょう。
 

 

早い者勝ちの特許出願の世界において全項目100点を目指して遅れをとることは本末転倒です。
そこで、特許出願の目的に沿う項目の質を優先的に高める設計が鍵を握ります。
例えば、無闇に権利範囲を拡げてしまうと、従来技術が権利範囲内に入る可能性が高くなるため、新規性の審査を突破する力が著しく低下するおそれがあります。
各項目の相関関係を踏まえた上で、特許出願の目的に照らし優先的な項目を高めるようにしましょう。    

前回

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このお話で学べること

特許出願の検討の流れ
仮設計(発明提案)のイメージ
仮設計(発明提案)のコツ
 
たま
一緒に楽しく学んでいきましょう!

本編

瑛大から特許出願を検討するにあたっての心構えを学んだ新と悟。
いよいよ新の新商品開発コンセプトについての出願内容を相談していくことになった。

 
瑛大
特許部員
まず今日は出願内容の仮設計をしてみようか。

主人公
仮設計…ですか?
瑛大
特許部員
前回、特許出願の目的に沿う項目の質を優先的に高めることが大切だと説明したよね。

主人公
はい!覚えています!
各項目には相関関係があるので完璧な出願というのは難しいんですよね…
 
瑛大
特許部員
もう一つ注意点があるんだ。
各項目で許容できない程に質を落としてしまわないことも大切です。

事業企画
なるほど… 足切り点のようなイメージですか?
例えば特許権になる見込みがまるで無い出願内容では設計ミスですもんね。
瑛大
特許部員
その通り!
まずは最低限必要となる項目の質を確保する仮設計が必要だよ!
それをベースに優先項目を仕上げていくイメージが大切です。

 

 
瑛大
特許部員
特許出願をするまでの全体像と流れを伝えておくね。
まず最初は仮設計

事業企画
たった今教えて貰ったことですね。
最低限の質を確保しながら発明を広めに捉えて仮止めするイメージか…。
瑛大
特許部員
その上で本設計をしよう!

主人公
仮設計した発明の内容をベースに…
目的に照らし合わせて出願内容を磨き具体化する工程ですね。
瑛大
特許部員
そして最後に…書類作成
出願内容を明細書に落とし込み具現化していきます。
 
補足
特許の楽校のコンテンツは(特許の専門家ではなく)研究開発者や事業企画担当の方の目線で必要な特許の知識を届けるものです。

専門家の目線では出願明細書への落とし込みの説明に重点が置かれることが多いですが、特許の楽校ではその前の設計段階で何を考えれば良いかを重視しています。


主人公
イメージは分かりました!
それじゃあ今日は仮設計で何を考えれば良いかを教えて下さい!
瑛大
特許部員
OK!
仮設計の段階で検討すべきことを厳選すると下記の3つです。
①発明を捉える
②欲しい権利範囲を見渡す
③特許性を緩く確保する


主人公
ふむふむ…。
一つ一つ教えて頂けますか?
 
瑛大
特許部員
まず一つ目は発明を捉えることです。

主人公
これは何となく分かります!
自分達がした発明のポイントとなる技術は何かを認識することですよね?
瑛大
特許部員
その通り!
特許というのは技術的アイデアを生み出したからこそ与えられるものだからね。
いくら欲しい権利範囲を請求しても見出した発明から乖離してしまってはダメです。

 
瑛大
特許部員
二つ目は欲しい権利範囲を見渡すことです。

事業企画
まあそうですよね。
特許権を獲得したところで事業で使えない範囲に出願をしても無意味ですからね。

主人公
確かに…。
いくら審査を突破できるように特許性を確保した発明を捉えられていても…使いどころがないんじゃなぁ。
瑛大
特許部員
特許は出願するだけでもお金が掛かるし…
権利になった後も維持費が掛かる代物です。
欲しくも無い特許権を獲っても事業の金食い虫になってしまうから注意だね。

 
瑛大
特許部員
三つ目は特許性を緩く確保することです。
これはさっきも話に挙がったね。

主人公
いくら発明を捉えつつ欲しい権利範囲を設計できたとしても…
明らかに審査を突破できないような内容では結局特許権にならないからダメですね。
瑛大
特許部員
特許出願をすると代償として技術内容を公開しなければいけないです。
特許権にならなければ技術情報をバラまいただけになってしまうので注意が必要だね。

事業企画
でも…瑛大さん。
審査を突破できるかどうかって仮設計の検討レベルで分かるんですか?
瑛大
特許部員
おっと!良い質問!
確かに全ての審査ポイントを通過させようとすると踏み込んだ検討が必要なので…
最低限クリアしておくべきチェックポイントを知っておくと良いね!

 
瑛大
特許部員
ここに挙げた3項目を外してしまうと最早特許出願としての艇を為さなくなってしまうんだ。

主人公
確かにそうですね…。

事業企画
だからこそ入口で検討して最低限の質を確保した上で本設計に進むやり方が良いって訳ですね。
瑛大
特許部員
バッチリです!

瑛大
特許部員
お待たせ!
それじゃあ新くんの新商品コンセプトを聞かせてくれるかな!?
実際に出願内容の仮設計をしてみよう!

主人公
了解しました!

瑛大
特許部員
おおお~!!!
面白い技術アイデアだね!

主人公
ありがとうございます!!
事業企画
ニーズありそうだし事業展開も色々想像できて良いコンセプトだと思うよ。
瑛大
特許部員
よし!
今の話をもとに発明を捉えてみようか!
 
瑛大
特許部員
というわけで新くん一つ復習です!
前に発明や権利範囲の読み方を説明したと思うのだけど覚えているかな?

主人公
はい!覚えています!
条件(構成要件)に分解して読むことがコツでした!
瑛大
特許部員
そうだね!
鉛筆で言えば、断面の形状、被覆材の材質、芯材の材質、総重量…のように一つずつ条件を分解して読むことが大切。

主人公
そして…権利範囲は1セット!
それら条件の全てを満たすところが権利範囲なんですよね!

 
瑛大
特許部員
では… それを踏まえて発明を定義するときはどうしたら良いかな?

主人公

そっか!

逆に発明を構成し得る条件を出して組み立てていったら良いんだ!
瑛大
特許部員
ご名答!
そのイメージが発明の捉え方のベースになるから覚えておいてね!

 
瑛大
特許部員
まずは発明の内容を捉えつつ欲しい権利範囲を見渡してみよう!

 
瑛大
特許部員
最初は発明の条件をシンプルに書き出してみよう。
今回は美文字に矯正する機能を持たせた新しいボールペンに関する発明だよね。
工夫点は何かな?

主人公
持ち手部分に文字を書く時に手で握った圧力の変化を感知し信号化するセンサーを内蔵させることです!
瑛大
特許部員
それが一つ目だね!
他にはどうかな?

主人公
そうですね…
ペン先側には文字を書いた時の軌道を感知し信号化するセンサーを内蔵します!
瑛大
特許部員
ふむふむ。
信号化するだけではまだ発明として完結しないよね?

主人公
はい!
二つのセンサーから得られた信号情報をデータ処理するチップも内蔵する予定です!
瑛大
特許部員
もう一声お願いします!

主人公
ええ…っと…あ!
事前に美文字のプロ達のデータを収録したデータベースを用意しておきます!

事業企画
素人の書いた文字データとプロのデータとを対比することで美文字アドバイスを抽出するんだよな。
 
瑛大
特許部員
お疲れ様!
こんな感じで発明の機能が発現する要素を漏らさず捉えることが大切だね。

瑛大
特許部員
さて…
これらをそのまま権利範囲の条件として書いたとして…
果たして事業上欲しい権利範囲になりそうかな?

主人公
う~ん…
悟はどう思う?
瑛大
特許部員
そうそう!イイね!
密にコミュニケーションをとって事業や開発の構想を共有しながら範囲を設計することが大切!

事業企画
ん~…そうだな…
最初はボールペンだけでも良いけど、事業的にはシャーペンとか電子ペンとかもラインナップしていきたいかな。

主人公
なるほどな。
確かにこのコンセプトはボールペンに限らず筆記用具全般に通用しそうだな…。
 
瑛大
特許部員
重要な視点です!
発明を捉える時に事業を想像して上位概念化することは必ず考えよう!
瑛大
特許部員
似た観点だけれど一つヒントを出すね。
これって美文字矯正に限定の技術なのかな…?

事業企画
そうですね。
せっかく筆記データをとるなら美文字アドバイス以外にも出来ることは沢山ある気がします。

主人公
そういう意味でいうと…
筆記具の持ち手とペン先からデータをとることがこの発明の特徴です。
プロの美文字データと対比するのは選択肢の一つかもしれません。
 
瑛大
特許部員
そうだよね!
条件を付け加えるほど権利範囲は狭くなっていくので必須の特徴が何かよく考えないとね。

事業企画
あともう一つ気付いたんですけど…
センサーとかチップはうちの会社では製造しないですよね?
瑛大
特許部員
おっ!
良いところに気が付いたね!

事業企画
筆記具の技術は当然権利化するとして…
事業を優位するには部品の特許権も持っておいた方が良いんじゃないですか?
基幹部品は実権握って上で委託製造したりすれば競争力出ますよね?

主人公
(おわ…さすがに事業センスあるな…)
瑛大
特許部員
まさにその通りです。
製品のバリューチェーン全体を見て別カテゴリの発明も検討してみようね。


事業企画
ところで新。
話してて気になったんだけど…

主人公
ん?どうした?
事業企画
うちの会社ってセンサーとかチップ、データベースの類の技術って強いのか?
これは既存の部品で上手くいくのか?

主人公
既存の部品で作ってみたプロト版では処理精度が足りなかったよ。

事業企画
…!?
何笑ってるんだ?
大丈夫なのか?

主人公
そこは当てがあるから心配すんな!
瑛大
特許部員
…ん!?
まさか…理人くん!?

理人(りひと)23歳
理系の大学院に通う修士1年生
大学院でセンサー等の研究に励み中
新達の会社でインターンシップ中


主人公
そういうことです!
新くんの所属研究室はセンサー等の基礎研究で日本トップクラスなので!

事業企画
なるほど!
共同研究するって訳か!
良いアイデアだな…もう打診してみたのか!?
瑛大
特許部員
悟くん焦ったらダメだよ。
まずはプロト版の技術で良いから筆記具のコンセプトは出願しておこう。

主人公
技術情報を交換し始める前に自分達の成果については単独で特許出願しておかないとですよね。
 
瑛大
特許部員
その通り。
共同研究の注意点はまた別の機会に話すとして…
まずは新くんのアイデアをしっかり特許出願しておこう!

主人公
はい!
それじゃあ次は特許性を緩く確保する仮設計のポイントを教えてください!

 
瑛大
特許部員
これは結論から話してしまうね。
ズバリ…仮設計の段階では審査のチェックポイントのうち新規性は最低限クリアできるようにしておこう!


事業企画
新規性…?
瑛大
特許部員
新くん復習も兼ねて説明してみて貰えるかな?

主人公
了解です!
新規性のチェックポイントは、その発明が既に知られた技術ではないかをチェックするものです。

主人公
具体的には権利範囲の中に従来技術が含まれてしまっているか否かで判断します。
 
瑛大
特許部員
従来技術が希望する権利範囲内に含まれていないければ新規性のチェックポイントはクリアだね。

 
瑛大
特許部員
そこで…
この発明に関連する従来技術を把握している必要があります。

主人公
前にボールペン全般に関する技術動向調査をザクっとしました!
その時には近しい従来技術は無かったです!
瑛大
特許部員
残念ながらその調査では不十分なんだ。
実際に出願をする時には発明の具体的内容に沿ってもう少し精度を高めた調査が必要だよ。

主人公
そっか…。
確かに前の調査範囲の設定ではメッシュが荒くて従来技術が漏れているかもしれません。
 
瑛大
特許部員
出願した後に新規性を損なう従来技術が見つかってしまっては困るからね…。
瑛大
特許部員
という訳で新くん!
もう一度葵さんと相談して従来技術の調査をしてきてくれるかな?

姫宮葵(ひめみやあおい)30歳
颯真と同期入社
瑛大と同じ特許部に所属する美人社員
国内の大会で準優勝の経験がある特許検索の天才
新が密かに恋心を抱く存在


主人公
は、はい!
葵さんに相談してきます!(やった~!)

事業企画
ん~?笑
お前なんか嬉しそうだなぁ。

主人公
んなっ!?
そ、そんなことないってば…。

事業企画
ふ~ん…。瑛大さん!
俺も勉強したいんで付いて行っても良いですか?

主人公
お、おい悟!?
瑛大さん、必要ないですよね!?
瑛大
特許部員
えっどうしてかな?
意欲があってとても良いと思う!
二人で行っておいで!

事業企画
ありがとうございま~す!(ニヤリ)
主人公
(瑛大さ~ん…)
 
瑛大
特許部員
今日はここまで!
特許調査が出来たらまた来てね!

 

瑛大の鈍感ぶりが大爆発
新は悟と共に葵のもとへ特許調査の相談に行くことに…
次回へ続く。

第13話

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