身近な商品・サービスと知財のページへようこそ!
※本記事は、2025年8月時点での調査に基づいて執筆しております。
先日(2025年7月頃)、アメリカのIT大手企業の四半期決算が話題となりました。Netflix、Meta、マイクロソフト、Googleなどの各社で発表がありましたね。
やはりどこも話題になっていたのは「AI関連」でしたが、他にも印象に残っているのが・・・
「広告」です。
例えば、Google、Netflix、Metaなどでは、広告事業の売上が伸びていることが発表されていました。
具体的には、Metaでは、広告のレコメンデーションモデルを改善し、Instagramでのコンバージョン率が5%、Facebookで3%向上したとのこと。Netflixでは、「Netflixでは昨年、自社開発の広告システムへ移行し、ターゲティング精度や広告配信の最適化を強化していることが報じられています。
FacebookやInstagramで表示される広告を普段は意識していませんが、思い返すとつい目に留まることもあります。無意識に広告を見るという行動を取っており、さらには、その先の行動(購入など)につながる機会もありますね。
このように、AIを活用することで広告事業はさらに加速している印象があります。
上に挙げたアメリカの大手企業に限らず、広告事業は重要なマネタイズポイントになっているはず・・・。
ということで、本記事では広告について着目し、日本ではどんなアイデアが特許出願されているのか調べてみました。今回は、日本で有名なLINEヤフー、PayPayの最近の出願から、広告関係のアイデアをピックアップしました。
LINEヤフーの特許出願
LINEヤフーによって出願された多数の特許出願のうち今回ピックアップしたのは、「ランディングページの情報を生成AIに入力することにより、広告コンテンツが生成される」といったアイデアの出願です。
特開2025-98864
発明の名称:情報処理装置、情報処理方法、および情報処理プログラム
出願日 :令和5年12月20日(2023.12.20)
ステータス:審査請求前 (公開公報の発行)
ランディングページとは、広告コンテンツや検索結果などを経由して利用者に提供されるページを指します(明細書段落0013)。

(ランディングページのイメージ図)
この、ランディングページの情報(例えば、ランディングページに含まれるテキスト情報や画像情報)を生成AIに入力し、生成AIに広告コンテンツを生成させる、といった処理が実行されます(明細書段落0024)。

(筆者作成)
さらに、生成された広告コンテンツに対する広告効果が判定されます。広告効果は例えばCTR(Click Through Rate)、CVR(Conversion Rate)、ランディングページのインプレッションなどの指標で示されます。
広告効果が予め設定された条件に満たない場合は、必要に応じて広告内容を変更する仕組みも盛り込まれていました。

(筆者作成)
この特許出願はまだ公開段階のため権利範囲が確定していませんが、このアイデアのように、生成AIによって、ランディングページへの導線となる広告コンテンツの生成を加速することが可能になりつつありますね。
PayPayの特許出願
続いては、広告配信のターゲティングに関するPayPayの出願です。
特開2025-109923
発明の名称:広告配信装置、広告配信方法、およびプログラム
出願日 :令和7年5月21日(2025.5.21)
ステータス:審査中
本出願には、広告コンテンツを配信するターゲットを、決済情報に基づいて絞り込んでいくアイデアが公開されています。決済エリア、決済した時間帯から、次の行動にマッチした広告をユーザに配信できれば、ユーザの目にとまる確率が上がりますね。情報処理の全体像は下記のようになっていました。

(筆者作成)
明細書には、夕飯を終えて次のお店へ移動するユーザーをターゲットとする例について記載されていました!
(以下、段落0042より抜粋)
例えば、ある店舗でまとまった金額の夕食を済ませた利用者に対して、その後に近隣の珈琲店やカラオケ店等の広告コンテンツを配信すると、興味を示す確率がターゲットを絞らない場合よりも高くなると考えられる。
夕食後に立ち寄るといったユーザーの行動に合致しており、また、利用店舗から近い店舗の広告が配信されれば、ユーザは今のニーズに近い情報を得ることができるので非常に有益です。広告主側にとっても、興味のない層にまで広告を配信しなくてもよく、ターゲットを効率的に絞り込むことができます。
具体的な処理についても見てみましょう。
広告主は、入札条件を設定します。(配信するユーザの決済情報や、入札額)

(特開2025-109923 図8より引用)
サーバーが消費者の決済情報を取得した際、決済情報が合致する入札条件が設定されている広告コンテンツのうち、入札額に応じて配信されるコンテンツが決定されます。
このように、ターゲットを絞ってコンテンツを配信し、さらにターゲットの絞り方は決済情報に基づくといったアイデアが興味深かったのでピックアップしてみました。]
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、「広告」を切り口に、広告コンテンツを生成するアイデアと、広告コンテンツの配信先のマッチングに関するアイデアの2つの特許出願を紹介しました。
広告は情報処理技術との相性もよく、生成AIによって今後大きな進化を遂げていきそうな分野でもあるため、引き続きウォッチングを続けたいと思っています!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!

身近な商品・サービスと知財

オンボードアイピー

知財の楽校 公式メールマガジン
オフィシャル・ライターのご紹介

作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
https://bambooincubator.jp/members/kanada_yumiko
一言
雑談レベルで知財のことを楽しく知ってもらえたら。そんな思いで、日々執筆をしています!
SNS
X(旧Twitter)
https://twitter.com/omochi_benrishi