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今回は、NOT A HOTEL株式会社(以下、NOT A HOTEL)の提供する、NFTを活用した新しい宿泊サービスに関する記事です。
先日(7/13)に、資金調達に関するプレスリリースが発表されていました!
同じタイミングで、新たな別荘「NOT A HOTEL SETOUCHI」、「NIGO × NOT A HOTEL」の発表も重なり、Xにおいて『NOT A HOTEL』が一時トレンド入りするほど話題になっていましたね!
「NIGO × NOT A HOTEL」
— 濱渦伸次| NOT A HOTEL CEO (@shinji_hamauzu) July 23, 2024
東京湾に面した崖の上に建つ家、屋根の上にはKAWS。インセプションをコンセプトに、NIGOさんの脳内を表現したいとはじまったプロジェクト。
ヤバいです。https://t.co/lPZqnaz03q pic.twitter.com/T1Fb1WzCTH
(CEOのポスト。崖の上に建つ別荘が現実なのかと疑いたくなる世界観)
今回は、今まさに話題となっているこのNOT A HOTELについて、そのユニークなバリューモデルと特許をご紹介する記事です!
「そもそも、NOT A HOTELとは、一体何者なの?」「どんな特許出願がされているの?」
と気になる方は、是非ご覧ください!
※本記事は、2024年7月時点での調査に基づいて執筆しております。
目次
NOT A HOTELとは、どんなサービスを提供しているの?
そもそも、「NOT A HOTEL」とは、どんなサービスを提供しているのでしょう?
公式サイトを覗いてみると、とても素敵なフォトが並び、その世界観に引き込まれていきそう・・・!ここに住めるの?宿泊できるの?と、夢が広がります。
しかし、「NOT A HOTEL」は、その名前の通り、通常の宿泊施設とは、少し運用が違うみたいです。
前提として、NOT A HOTELは、物件を販売しています。1棟まるっと購入も可能ですし、期間限定での購入も可能のようです。
<自宅としての利用(1棟購入)>
各物件のオーナーは、この素敵な物件を自宅として利用することができます。1棟をまるまる購入し、365日、自宅として使用できるのですね。
(・・・文章で書くと簡単そうに見えますが、金額を見て驚きます)
<別荘のような利用>
1棟購入以外にも、10泊、30泊単位で購入できる「シェア購入」というプランもあります。(これなら、1棟購入よりも少しハードルが下がるかも?それでも私はとても手の届くものとはならないのですが)
<宿泊権>
オーナーは上記のような形で所有権を持っているのですが、自身が使用しない期間は、「宿泊権」としてNFTで他の人に販売することができます。ホテル事業のように、収益が得られるのですね。
このように、NOT A HOTELは、時に自宅のように、時に別荘のように、時にホテルのように・・・と、姿を変えながらユーザ(オーナー、宿泊者)に利用されていきます。
さらに、これらの切り替えは、ユーザがアプリを操作することによって簡単にできるのがポイントになっています。
文章で書くと長くなってしまいますので、NOT A HOTELと、オーナーと、宿泊者の関係性を図にしてみました。
オーナーから貸出可能期間を受け付け、リレント処理を行う(特許出願①)
NOT A HOTELの、物件としての購入から貸出をするまでの処理について、特許取得されていました!
特許7300229
具体的な内容としては・・・
まず、不動産物件に対してオーナーが購入手続きをします。
オーナーは、(ホテルとして)貸出可能な期間の申請とともに貸出要求をすると、リレント処理が行われます。リレント処理とは、オーナーが申請した貸出可能期間に基づいて対価を算出し、その金額をオーナーに支払います。
ポイントは、「貸出要求があったタイミング」でオーナーに対価が支払われること!実際に、宿泊として利用されなかった場合でも、NOT A HOTELが保証してくれるのです。
<引用:特許7300229 【請求項1】後半(補正部分)>
前記貸出要求は、前記不動産物件の他者への貸し出しを可能とする貸出可能期間に関する情報を含み、
前記リレント処理部は、前記不動産物件の貸し出しに伴い前記ユーザに支払われる対価の金額を、前記貸出可能期間に基づいて算出し、
前記リレント処理部は、前記貸出可能期間における前記不動産物件の貸出利用の有無に関わらず、前記貸出要求を受け付けた時に前記対価の金額を前記ユーザに支払う決済処理を行うことを特徴とする物件管理システム。
この点がおもしろいですね。実際に運用もそうなっています。
貸出要求のタイミングでは、実際に宿泊するユーザが見つかるかは分からないのですが、もし宿泊者が見つからなかった場合は、NOT A HOTELが保証してくれる仕組みになっています。
オーナー側からすると、貸出可能と申請した日数×宿泊料の収入は、保証されるということです!この部分が権利化されている様子が窺えますね。
冷蔵庫から取り出した瞬間に決済完了(特許出願②)
ここからはNOT A HOTELの「ホテルとしての運営」について着目していきたいと思います。
オーナーからの申請により、他の人に物件をホテルとしてして貸し出す場合は、NOT A HOTELは、ホテルとしての運営を担います。チェックイン対応や清掃、食事のサービスなど。通常のホテル運営とおなじようなタスクが発生します。
ここにもNOT A HOTELの工夫が窺えます。まず、チェックインはユーザのアプリから簡単に行うことができます。(チェックイン関連の特許出願(特開2024-092456)も見つかりましたが、今回は割愛します。気になる方は確認してみてください!)
滞在中は、AIコンシェルジュ(チャットボット)がサポートしてくれます。
中でも気になったのがこちら。ホテルでよく見かける、冷蔵庫のミニバーのサービスですね。冷蔵庫から取り出して飲んだ分を紙に書いておき、精算時に申告する・・・といった従来の方式ではなく「冷蔵庫から取り出した瞬間に、決済が完了する」という、なんとも快適な体験を提供しています。このアイデアは、特許取得されています。
特許7307491
明細書中には、冷蔵庫の中の各商品にRFIDタグを付けておき、ユーザによって冷蔵庫から取り出される操作を検知する例が記載されています(明細書段落0015等)。
特許の請求項では、ユーザから商品が抜き取られたあとについて、ユーザの嗜好に関する情報(例えば、アルコール消費量など)に基づき、商品を補充する必要があるか否かを判断する処理ついてさらに述べられています。技術の力によって、行き届いたサービスを提供されている様子が知財情報からも窺えますね。
いつか「カーテンが自動で開く」ようになる?より快適な滞在へ
さて、ここまででも十分に、NOT A HOTELの素晴らしいアイデアをお楽しみいただけたと思いますが、ユーザのより快適な滞在を追求しているNOT A HOTELのアイデアが、特許情報から読み取れましたので最後にご紹介いたします。
画像引用元:特開2022-023282 【図1】
就寝中のユーザの生体情報(心拍数、呼吸等)を取得し、生体情報からユーザの睡眠状態を判定、その睡眠状態に応じてカーテンの開閉を制御する、というものです。
一般的に、人は、気持ちよく目覚めることができる(=つまり、眠りが浅くなっている)のは「レム睡眠状態」であるタイミングであるといわれています。生体情報から、ユーザがレム睡眠状態の後半になる時間帯を予測し、そのタイミングに合わせて、カーテンを開放させて外部からの光を室内に通すよう制御するものです。
NOT A HOTELから公開されている記事にも上記に近いアイデアが記載されていました。将来、こんな体験ができる滞在が実現されそうですね。
NOT A HOTELのnoteより引用:
将来的には、起きたタイミングで自動的にカーテンが開いて照明がついたり、部屋を出たら自動でエレベーターがやってきたり、といったレベルの自動化にも取り組んでいきたいです。
まとめ
以上、NOT A HOTELの魅力を、特許情報も交えてご紹介しました。
物件のオーナー目線で魅力的な点(貸出可能期間に応じて対価が保証される)も、宿泊ユーザ目線で魅力的な点(冷蔵庫)も、いずれも特許権で保護されていることが印象的でした。
いつか、特別な日だけでいいので滞在してみたい・・・。また1つ、人生の目標が…具体的には仕事を頑張る理由が増えました!!という個人的な感想で、今回は締めさせていただきます!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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オフィシャル・ライターのご紹介
作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
https://bambooincubator.jp/members/kanada_yumiko
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