前回のあらすじ

たま
動画で学びたい方は一番下まで飛んで下さい。
前回のあらすじ
今注目の文房具メーカーに研究者として勤める新は 上司である朔の薦めで知財部員の瑛大から特許のことを教わっ[…]
このお話で学べること
この記事の評判
いいねを頂いたので覗いてみると、とても分かりやすくまとめられていて勉強になりました。 僕が関わっている新規事業もそうですが、R&D型の起業や新規事業に取組む場合、知財戦略が非常に重要になります。 知財戦略は素人にはとても難しいのですが、噛み砕いて説明していて分かりやすいです。 https://t.co/s3ttHkvEyd
— 新里一樹 | 沖縄で新規事業する人 (@shinzato_k) August 2, 2020
本当に分かりやすくてとても勉強になりましたし、スタートアップや、R&Dされている企業担当者にとって有益な情報だと感じました。僕も勉強させていただきます。ありがとうございます。
— 新里一樹 | 沖縄で新規事業する人 (@shinzato_k) August 2, 2020
皆さんは新卒のエンジニアの人に進歩性をどう説明しますか?
その答えがこのブログに書かれています。 今回の作品を読んで、ここまでシンプルにするにはかなりの努力があったのだと感じました。 https://t.co/rHMvRQwNPY — 野口剛史@米国特許弁護士 (@koji_noguchi) August 1, 2020
本編
新と颯真が飲みに行った次の日の朝。
研究チームを組むことになった2人は早めに出社して今後のことを相談していた。

上司
おっ、2人とも今日は随分早いな。
昨日は飲みに行ってたんだろ?

主人公
はい!颯真さんと楽しく飲みました!

先輩
実は新と研究チーム組もうっていう話になりました。
新商品プロジェクトは2人で挑戦したいんですけど良いですか?

上司
うん、良いチームになりそうだな!

先輩
今朝はこれまでの研究内容を共有しておこうと思いまして。

上司
それなら颯真のこれまでの特許出願も見て貰ったらどうだ?

先輩
リストアップして新に見せたいと思います。

上司
期待してるぞ。

主人公
颯真さん。
朔さんが過去の特許出願を見るように薦めた理由ってなんですか?

先輩
基本的には発明した順に特許出願されとるし。
研究成果のうち大事やと思ったものを出願しとる訳やからポイントを掴むのにええと思うで。

主人公
特許からは色々な情報が読み取れるんですね。

先輩
ライバルに対しても同じように分析をすると、 いつ、どんな技術を、どんな順番で取り組んだか見えてくるで。

先輩
新はこれまで特許出願したことあるんか?

主人公
報告書なら何件か書いているんですけど。

先輩
新の研究開発の力量を客観的に示すことができる。
社内の報告書は機密やけど、特許なら公開情報やから色々とアピールに使えるで。

主人公
特許は成果をカタチにするもので、それが自分のキャリアにもなるんですね。

先輩
そろそろ朝礼の時間やな。
午前中は瑛大さんのところに行くんやろ?
頑張ってきてな。

主人公
颯真さんがどんな研究をしてきたか流れがよく分かるなぁ。



主人公

大学院生

特許部員
今日も頑張ろうね!

特許部員

主人公
さっき颯真さんの過去の特許を見ていて気が付いたんですけど…
特許になっているものと、そうでないものがあったんです。
これってどういうことですか?

特許部員
とても大事なところに疑問を持ったと思う。
それじゃ今日は出願してから特許権を獲得するまでについて学ぼうか。

特許部員
理人くん、特許制度ってどんなものでしたか?
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大学院生
代わりに、期限付きでその技術を独占する権利を貰えます。


特許部員
飽くまでも世界中の人が知見として活用できるような技術を公開したからこそのご褒美なんだ。
残念ながら出願された特許の技術が全てそういうものとは限らないよね?

主人公
出願されたからといって、その全てが特許権を貰う程に価値ある技術とは限らないですね。

特許部員
だから、出願された技術に特許を与えて良いものかどうかがきっちり審査されるよ。
特許庁の審査官とやりとりをして、審査に合格して初めて特許権が貰えるんだ。


大学院生
出願してから特許権になるまでの流れをもう少し詳しく知りたいです。

特許部員

特許部員
これは前に教えたよね?

大学院生

特許部員
他の人から似た出願がされていないか、誰が早いかは、ここで初めて明らかになるんだ。
颯真くんがライバルに出願日で負けていた事実を知ったのもこのタイミングだね。
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特許部員
審査をして貰う場合にはお金を払うよ。

主人公
出願したものは全部が審査されるんじゃないんですか!?

特許部員
それに、出願した人も全部審査して欲しいとは限らないでしょ?

主人公
出願日に負けていて不利だと分かったら諦めることもありますよね!

特許部員
でももう一つ大事な理由があるよ。

特許部員
でも後から別の良い技術ができて、出願していた古い技術は本命でなくなることもあるんだ。

主人公

特許部員

特許部員
この審査の中で特許を与えて貰える範囲を正式に取り決めていくんだ。
日本では審査には平均1以上は掛かるよ。

大学院生
流れがとても良く分かりました!


大学院生
どんなことが審査されるんですか?

特許部員
審査されるポイントは色々あるんだけど今日は絶対押さえるべき3つを教えるね。

特許部員
言い換えれば、公開した技術の価値に見合う権利を与えるものなんだ。

大学院生
まず大前提として、出願した技術にちゃんと価値があるかが審査されるんですね。

特許部員
それについては2つのポイントに分けて審査されるよ。
1つ目は新規性と呼ばれるもので、その技術が世の中に知られていないかどうか。
2つ目は進歩性と呼ばれるもので、簡単に思い付かないものかどうかだよ。

主人公
専門用語が出ましたね。

特許部員
新規性や進歩性は特許をやる上でかなり頻出する用語だから覚えておいて損はないよ!

特許部員
つまりあまりにも広過ぎる範囲が特許権として請求されていないかどうかを見るんだ。
これはサポート要件と呼ばれるよ
これも頻出だからぜひ覚えてね。


大学院生
分かったような分からないような…。

特許部員
そう思って具体例を用意したから一つずつ見ていこう。

主人公

特許部員
転がらないように工夫した点は断面を六角形にしたことです。
六角形だけだと権利が狭すぎるからもう少し範囲を広げて特許権が欲しいよね。
2人はどこまでの範囲を請求するかを決めるんだ。

特許部員
審査する上では従来技術が大事。
2人が発明した六角形の鉛筆よりも前に1番近いものとしてどんな技術があったかだね。

大学院生
六角形の鉛筆がその従来技術に対してどれ程凄いかで決めるということですか。
比較対象を置いてさっきの3つのポイントを審査するんですね。


特許部員

主人公
まずは新規性からお願いします!

特許部員
一方従来技術は断面が円形のものしかなかったとする。
この場合は、請求している範囲の中に既に知られた円形は入っていないから合格!


特許部員
この場合は多角形の中に既に知られた五角形が入ってしまっているから不合格。


大学院生
次は進歩性を教えて下さい!

特許部員
さっきと同じように2人が多角形の範囲まで請求していて従来技術が円形だったとしようか。

大学院生
今度は円形の鉛筆から多角形の鉛筆が思い付くかどうかを審査するってことですね?

でも思い付くかどうかを決めるのって中々難しいよね。
色んな判断ポイントがあるんだけど代表的なものはヒントがあるかどうかかな
鉛筆を円形から多角形にしようと思うようなヒントが世の中に無ければ合格!


特許部員
不合格の例を出すね。
多角形の鉛筆は確かに無いけれど、同じように転がらないことを目的とした多角形のお箸があったとしよう。
この場合はお箸の例をヒントにすれば鉛筆でも多角形にすることを思い付く筈だから不合格!


主人公
確かにそれなら思い付くと言えそうですね!

大学院生

特許部員
新規性や進歩性があったとしても、広過ぎる権利範囲になってやしないかを見るんだ。
従来技術が円形の鉛筆だとすると、今回の課題は転がってしまうことだよね?
これに対して多角形の鉛筆はちょっと広過ぎるよね。

大学院生
角を付けたことがポイントなんですから、それくらい権利貰えても良いと思いますけど。

でも…十角形とか極端に言えば百角形とかならどう?

主人公
百角形なんてもう殆ど円形ですもん。

特許部員
転がらないという課題を解決できなさそうなものまで入ってしまう権利範囲は広過ぎるんだ。
だからこの場合は不合格!


特許部員
これならどうかな?

大学院生

特許部員
ちなみに3~8角形を全部試して証明しないといけない訳じゃないよ?
ここまでなら課題が解決できそうだねってことが説明できていれば良いんだ。


主人公

大学院生

特許部員
理解して貰えて良かった。
それじゃあ今日はここまで!
お疲れ様!



たま
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